神戸 光男・作/西村 繁男・絵
あらすじ
町のかたすみに、ぽっかりあいた小さなはらっぱ。そこだけ、はるかむかしの土のにおいがする。
1934年頃(昭和9年)の戦中から戦後の現代までの「はらっぱの移り変わり」を描いています。
子どもたちの遊ぶ姿や笑い声、お祭りでの盆踊り、相撲大会などでにぎやかだったはらっぱが、次第に変わっていきます。
戦争に行く人たちをお祝いしたり、防空演習の場所になったり、食料不足のために畑になったり、
そしてたくさんの爆弾が落ちて人々は逃げまどい、辺り一面何もなくなってしまいました。
それから何年後かにはらっぱはまた子どもたちの遊び場になりました。
まだ戻ってこない子どもたちもたくさんいたけれど・・・
さらに何年もたち、昭和45年頃には町はすっかりきれいになり、大きなマンションも建ちました。
でもはらっぱはなんだか寂しそうです。
遊びに来る子どもたちがいないから・・・みんなどこに行ったのでしょう。
さらにさらに年数が経ち、現代の子どもたちがはらっぱに帰ってきました。
でも、周りはコンクリートやアスファルトで固められて、はらっぱは以前より小さくなって子どもたちは少し窮屈そうです。
はらっぱも子どもだけの遊び場ではなくなりそうです。
『はらっぱ』について
戦前から戦後、現代にいたるまでのはらっぱの変化を空から俯瞰的に眺めた絵本です。
周りの家の様式や人々の生活、そして年代の横に書いてある解説を対比させてみると歴史を感じることが出来ます。
戦争が始まっても子どもたちははらっぱで楽しそうに遊んでいますが、その光景も戦火が激しくなるとみられなくなっていきます。
それでも戦後貧しい時代ですが、子どもたちの笑い声はすぐにはらっぱに返ってきます。
そして、東京オリンピックの高度経済成長において高いビルやアスファルトの道路が整備され、はらっぱは子どもたちの遊び場ではなくなっていくのです。
大人がこの絵本を読むと、子どものときに遊んだはらっぱのことを思い出してしまうでしょう。
個人的には戦時中から現代まで残っている「マキ美容室」と「吉田病院」が大きくなっていくのがシムシティのようでした。