アンドレア・ベイティー ・作/デイヴィッド・ロバーツ ・絵/かとう りつこ ・訳
あらすじ
ロージーは「世界一のエンジニア」になりたい女の子です。
学校ではおとなしくて目立たないけれど、家に帰るとエンジニアのたまごに大変身!
ゴミ箱からガラクタを拾ってきては、毎晩色々なメカを作っています。
今まで作ってきたのは「ホットドッグせいぞうき」「ふうせんパンツ」「ヘビたいじヘルメット」など、ユニークなものばかり。
ところが、これらのメカを見たおじさんはお腹を抱えて大笑い!!
「どうしてそんなに笑うの?」
ロージーは悲しくなって、この日からエンジニアになる夢を心の中にしまい込んでしまいました。
そんなロージーのところに大おばさんが遊びに来ました。
若いころに飛行機工場で働いていた大おばさんは、自分で造った飛行機をはじめ、今までひとつひとつ叶えてきた夢のことを話してくれました。
そして今、大おばさんのどうしても叶えたい夢は「空を飛ぶこと」だそうです!
大おばさんの夢を叶えてあげようと、ロージーは夜中に寝ながら考えてみました。
「これならいけるかも・・」とあるメカが頭に浮かびましたが「こんなの無理に決まってる」とロージーは忘れようとしました。
でも、その考えは頭から離れずに一晩が経ってしまいました。
そしてロージーがああでもない、こうでもないと苦労して完成させたのは「チーズコプター」です!
そうじゅうせきに すわって スイッチオン。チーズコプターは バリバリ ブルブル いいはじめ、フワッ とうかぶと グルングルンまわり、きゅうに プスンと 動きをとめて、・・・・・ドスン! じめんにおちました。
「やっぱりだめなんだ・・・、世界一のエンジニアになんかなれっこない・・・」とロージーが諦めようとすると、後ろから見ていた大おばさんがロージーを抱きしめて大きな声で言ったのです。
大おばさんの話を聞いて、ロージーは大切なことが分かりぱっと笑顔になりました。
その日の夜、ロージーは世界一のエンジニアになる夢を見ながらぐっすり眠ることができました。
『しっぱいなんかこわくない!』について
NASAの女性宇宙飛行士、ケイトことキャスリーン・ルビンズさんが国際宇宙ステーション(ISS)から地球の子どもたちへ読み聞かせをしたことで話題になった絵本です。
この絵本のテーマはタイトルどおり「夢をあきらめない」「やればできる」「失敗を恐れるな」ということです。
世界一のエンジニアになりたい夢をもつ女の子の心の揺れ動きが、奇想天外なメカととも描かれています。
まずはロージーの表情に注目してみてください。
- ガラクタを楽しそうに拾ったり、一面に並べたガラクタを組み合わせてメカを作っているワクワクしている顔
- メカを作ってまわりの大人たちが驚いている時のロージーの得意げな顔
- メカを笑われたりうまくいかなくて落ち込んでいる顔
- 大おばさんのための空を飛ぶメカを考えている真剣な顔
- 色んなメカを作ることを覚えた同級生たちとの嬉しそうな顔
ロージーの心境の変化をこんな表情から読み取ることができます。
ついでに、いつもロージーと一緒にいる黄色い鳥にも気づいてあげてください。
ロージーの心境に合わせて表情がくるくる変わり、大おばさんにロージーが抱きしめられている時も別の鳥と抱き合っているのがキュートです。
いわばこの鳥はロージーの分身ですね。
そして、この絵本は子ども全体にエールを贈っているのは当然ですが、特に女の子の夢を応援している側面もあると思います。
従来の絵本だったら確実に「男の子と大おじさん」という設定だったのが、この絵本では「女の子がエンジニアになる」というイマドキの設定になっています。
女性宇宙飛行士がわざわざ宇宙からの読み聞かせをしたというのは、この絵本の内容に夢を実現した女性が共感する部分があったのではないでしょうか。
アメリカの技術革新の歴史は女性の社会進出の歴史でもあり、ロージーが大おばさんに言われて笑顔を取り戻した場面では、ロージーのメモが描かれています。
そこには「そらを とんだ おんなたち」という題名で歴代の女性飛行士がメモされていました。
1784年 エリザベート・ティブル はじめて ききゅうで そらへ
1906年 リリアン・トッド ひこうきを せっけい
など
そして一番肝心な大おばさんがロージーに何を言ったのか?
それはぜひ絵本を読んでみてください!!