ビンバ ランドマン(文・絵)鹿島 茂 (翻訳)
あらすじ
アントワーヌ・サン=テグジュペリは子どものころから、空想好きでした。
そして、高い木に登って、巣の中にいるキジバトの羽を触るのも大好きでした。
そっと羽を触っていると、何か広い空間が広がっていくのを感じて、「翼をもって空を飛ぶ夢」が大きくなっていったのです。
12歳の時に内緒で乗せてもらった飛行機から見た光景に感激し、その時の気持ちを詩に残しました。
翼は夕べの風にふるえ、
エンジンの聖なる歌声は、眠れる魂をゆり動かす
太陽はその青白い光で、ぼくたちにふれた
12歳ですでに彼は、「飛ぶこと」と「書くこと」への情熱に憑りつかれていたのです。
戦争が始まり、サン=テグジュベリは念願の飛行機のパイロットになりました。
彼の任務は「手紙を世界中に飛行機で届けること」
砂嵐、エンジントラブル、出会う人々のいざこざなどたくさんの困難を乗り越えて、彼は「人々の気持ち」を運んでいきました。
砂漠で出会う部族たちともサン=テグジュベリは仲良くなりました。
彼らは親しみを超えてサン=テグジュベリのことを"鳥たちの司令官"と呼ぶようになりました。
サン=テグジュベリは"きずな”を作ったのです。
母親への手紙にはこう書かれています。
「ぼくのここでの任務は、きずなをつくることです。きずなとは、すてきな言葉です」
「砂漠にすむキツネも、ぼくになつくようになりました」
こんな飛行体験を元に書かれたのが『南方郵便機』と『夜間飛行』です。
それからのサン=テグジュペリは不遇の連続でした。
祖国フランスのために尽くしたくても、高齢を理由に飛行機を飛ばさせてもらえないのです。
ただもう一度だけ空を飛びたいと願う彼は手紙をたくさん書きました。
その中には一人の小さな男の子がよく出てきました。
彼は誰なのかサン=テグジュペリ自身にも分かりません。
「これをおとぎ話の主人公にしましょう!」という話が上がり、彼はますますその男の子を書き続けました。
- この子との出会いはかつて飛行機が不時着した砂漠で。
- この子もキツネになつかれています。
- この子も夕暮れやバラが大好きです・・・
この素晴らしい物語を書き終えた数か月後に、サン=テグジュペリは飛行機に乗ったまま消息を絶ちました。
彼はいなくなっても、まだ人々の心に生き続けています。
なぜ『星の王子さま』がこれほど世界中の人に愛されているのか。
それは誰にもわかりませんが、一つあげるとすれば
「大切なことは目に見えない」からではないでしょうか。
サン=テグジュペリの激動の生涯を描くアート絵本です。