ヒルデガード・H. スウィフト (著), リンド ウォード (イラスト),掛川 恭子 (翻訳)
あらすじ
アメリカのニューヨークのハドソン川に小さな赤い灯台が建てられました。
夕暮れ時になると、灯台守のおじさんが階段を上がってきて、ガスの栓を開けてくれます。
そうすると小さな赤い灯台は、川を通る舟たちが分かる言葉で声をかけ始めるのです。
ピカッ!ピカッ!ピカッ!
パッとついたよ、パッときえたよ!
きをつけるんだよ! ぼくはここにいるよ!
小さな赤い灯台はみんなの役に立っている気がして、大得意な気持ちがしていたのでした。
実際どの舟も、霧や夜の中の川を走るのに小さな赤い灯台がいてくれてありがたいと思っていたのです。
ところがある日のこと、大勢の男たちがハドソン川にやってきて、大きな灰色の橋を建てたのです。
そして、大きな灰色の橋のてっぺんから出す光は小さな赤い光よりもとても強力なんです。
ぼくはもういらなくなっちゃったんだ。
ぼくのひかりはこんなによわいのに、あのとうのひかりは、あんなにつよいじゃないか!
ぼくなんかもう、つかってもらえないかもしれない。
ひかりをつけてもらえないかもしれない。
実際、灯台守のおじさんも全然やってこないんです・・・
ある日、嵐がやってきました。
真っ暗闇で霧も深く、海も荒れている中、舟が一隻やってきました。
でも霧が深く、大きな灰色の橋の光が届きません。
舟は方向を見失い、岩にぶつかってしまいました。
その時、大きな灰色の橋が小さな赤い灯台に大声で呼びかけました。
「ちいさなきょうだいよ、おまえのひかりはどうなってしまったのだ」
「わたしは ひこうきにむかってよびかけている」
「わたしのあいては、そらのふねだ。だが、川のぬしは、いまでもおまえだ。いそげ、いますぐひかりをおくれ!それぞれがじぶんのやくめをはたすのだ!」
小さな赤い灯台だって光をおくりたいのです。
でも、灯台守のおじさんがいないと、自分ひとりではどうしようもできない。
小さな赤い灯台は暗闇の中を真っ暗なままで、悲しく立っていました。
すると、はるか下の方で小さな赤い灯台の階段を駆け上がってくる足音が聞こえました・・・
『ちいさな赤いとうだい』について
小さな赤い灯台と大きな灰色の橋は今でもハドソン川に立っています。
- 小さな赤い灯台ーLittle Red Lighthouse
- 大きな灰色の橋ーGeorge Washington Bridge
自分よりも巨大で強い光を放つ相手に対して、自分は無能でもはや不要ではないかと悩み落ち込む小さな赤い灯台に心打たれます。
でも、誰にもそれぞれ役割がある。
自分のできることを精一杯やることが大切。
体や能力の違いに関係なく。
『ワンピース』でも格闘能力の低いウソップが敵を倒せずに、「やっぱりおれなんか・・・」と落ち込む場面があります。
それに対してサンジは「おまえにできないことを俺がやる。俺にできないことをおまえがやれ。ウソップ!」と鼓舞します。
これでウソップは得意の狙撃を活かして"自分のできること"で活躍することができ、自信を取り戻しました。
『ワンピース 43巻 第414話」より
人と比べて自分を卑下するのはもったいないですね。