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『僕は上手にしゃべれない』椎野直弥 吃音者が書いた小説はリアルで心の叫び。そして吃音者の気持ちを表現してみました。

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『僕は上手にしゃべれない』は吃音で悩んでいる中学生の柏崎悠太くんが中学入学から更に吃音に悩み、人間関係に悩み葛藤し成長していく物語です。

 

「吃音」とは言葉がつっかえたり出なくなるという滑らかに喋れない症状です。

ちなみに私も吃音者です。

なので、ここに出てくる柏崎悠太くんの気持ちが痛いほどよく分かります。

 

そして、このなぜこの小説がこんなにリアルかというと作者自身も吃音者だからです。

まさに吃音者だからこそ書けた小説ですね!

 

私の中学生時代もこんなことに悩んで苦しんできたなと、胸が締め付けられながら読んでみました。

 

今回は柏崎悠太くんに向けて手紙を書くという形で気持ちを表してみました。。

この話を全国の中学生諸君に贈りたい!

 




柏崎悠太くんへの手紙

拝啓 柏崎悠太君初めまして

僕も君と同じどもりのある吃音者です。

君の物語を読んでとても共感して中学時代を懐かしんでしまいました。

僕も自己紹介がとても苦手で、未だに緊張します。

君の様に学校を休んだり逃げ出したりする勇気はなかったけど、できるならそうしたかった。

 

初めて会う人に自分が吃音であるということを知られたくないんだよね。

 

とてもよくわかります。

いまだにそう思うときあるからね。

君と違って僕は母音は言いやすいけどサ行は逆に言いにくい。

だから自分の苗字の「鈴木」は結構つっかえることが多い。

 

自分の名前が言いにくい吃音者は結構多いんだよね。

名前なんて一番多く言う言葉だから余計に辛いよね。


どうして吃音であることを知られたくないんだろう。

やっぱり周りから変な目で見られたり、陰で色々言われたりするのが嫌なんだと思う。

中学生なんて一番そういうの傷つく時だから余計に辛いよね。

 

それは吃音のことが周りに知られていないからじゃないかな。

 

少なくとも僕は学生時代には、吃音のことを理解している人に会ったことがないよ。

だから変わった喋りかたをする変な奴だという 目で見られてしまうことも多かった。

学生時代はわざわざ目の前にきてからかわれたり真似されたり嫌な思いはしたもんだよ。


だから、ぼぼ、僕は障害者ではありません。でも、け、けけけ、健常者でもありません。ふ、普通じゃないのにふふふ、ふふふ、普通にああ扱われるというすごくあ、あああああ曖昧なところに僕はいます。その曖昧さがき、き、ききき、吃音症の苦しいところだと僕は思います。

君の弁論のセリフはまさに心の叫びだね!!

まさに吃音者の心を表してるよね!

今まで言いたくても上手く言えなかったことをスッキリ言ってくれてありがとう。

 

車椅子に乗っていればすぐ分かるのに、吃音者は見た目や行動は全く普通だから尚更分かってもらえないしね。

そして我々吃音者は曖昧なところにいるというのはとても共感した。

言葉を使わない仕事もあるにはあるけど、やりたい仕事が吃音が原因でできないならそれは障害になるんだよね。

実際、仕事の面接でも 「どもりが電話に出ると会社のイメージが悪くなる」って言われたこともあるしね。

でも吃音でも頑張って夢をかなえた人もいることも事実だよ。

医者、落語家、タレント、先生

みんな苦労してるけどがんばっているんだ。


正直、君のどもっているセリフは、自分が言っている様で恥ずかしくて情けなくて目を背けてしまうところもあった。

授業中 分かっていてもどもるのが嫌で手を挙げることもできなかったくらいだから。

吃音は原因不明で治しかたも確立されていない。

僕も発生練習や本の朗読など色々やったけど何の意味もなかった。

 

君と同じで1人で喋るときは普通に喋れる。

 

スピーチの練習もスラスラ言えるし歌も普通に歌える。

でも人と喋ると全然ダメになってしまう。その度に落ち着いて話せ とか言われるけど、家族と喋っている時などはこれ以上ないくらい落ち着いているしどうしたらいいんだろうね。

 

うまくしゃべれる自分と全然しゃべれない自分。

どっちが本当の自分なんだろう。

 

僕の感覚で言うと 「焦る」とどもりやすくなることはあると思う。

すごい伝えたいこととかあると気持ちが先走って口まで伝わらない様な感覚なんだ。

これは普通に喋れる人でも火事など切羽詰まった状況になるとうまく言葉が出てこないと言えば想像しやすいかもね。


もし君が将来吃音のことで専門家に相談したということになったら 言語聴覚士という人たちがいる。

書く、読む、聞く、話すことの障害がある人達の訓練やサポートをしてくれる。

実は僕もなろうと勉強したことがあったけどまあ色々あって残念ながらなれなかった。

吃音は日常生活での影響があまりないと思われていてあまり重要視されていな分野だけど、専門的に勉強してきた人たちだから専門家の立場から色々相談に乗ってくれるよ。

他にも吃音者の集まりやグループもある。

君は今まで他の吃音者に会ったことがないのも、自分は宇宙人みたいな存在だと思ってしまうことの原因の一つじゃないかな。

 

幸い君には古部さんという吃音があった友達ができたけど、他の吃音者と会って話すのもすごい気持ちが楽になると思う。

自分ひとりじゃないんだと実感できると思う。

僕は弟以外の吃音者に20代後半まで会ったことがなくこんな喋りかたをするのは僕らだけだと思ってすごい悩んでいたからね。


本好きの君にはぜひこの本も紹介したい。

重松清のきよしこ青い鳥という本なんだ。

「きよしこ」は君みたいな吃音の少年の成長を描いた作品で「青い鳥」は吃音のある先生の物語。

中学生にはぴったりの本だと思うよ。

 

最後に君は周囲の人にとても愛されているよね。

お姉さん お母さん 立花先輩 椎名先生 そして古部さん。

 

それは吃音者だからではなくきっと君の人柄が良いからだよ。

 

性格が悪かったら誰も君の助けになろうとはしないと思うよ。

 

だから吃音だから自分を好きになってくれないと思うのは止めよう。

と言いながら僕はアラフォーになっても、吃音のせいでモテないと思う時は多々あるけどね。

これからもどうしても話さなくてはいけない場面は多々出てくると思う。

でも弁論大会にも出て放送部に入った勇気のある君ならきっと乗り越えられる。

周囲の人もきっと助けてくれる。

どんな状況でも絶対味方はいるからね。

 

それでは勉強も恋も 学生時代にしかできないことをたくさん経験してね!

敬具

 

 

【吃音が出てくる物語】

きよしこ

重松清

青い鳥

重松清

志乃ちゃんは自分の名前が言えない(漫画)

押見修造

金閣寺

三島由紀夫