新見南吉・作/鈴木靖将・絵
目次
あらすじ
ある日、でんでんむしは大変なことに気がつきました。
「わたしの背中の殻には、悲しみがいっぱいつまっているではないか」
この悲しみをどうしたらよいか分からず、でんでんむしは友だちのでんでんむしに会いに行きました。
ところが会う友だちは決まって同じことを言うのです。
「あなたばかりじゃ ありません。 わたしの せなかにも かなしみは いっぱいです。」
そしてでんでんむしは気がつきました。
「悲しみは誰でも持っている。私ばかりではないのだ。私は私の悲しみをこらえていかなくてはいけないのだ」
こうしてでんでんむしはもう嘆くのをやめました。
『でんでんむしのかなしみ』について
『ごんぎつね』で有名な新見南吉の絵本です。
『でんでんむしの悲しみ』は小学生以下の子どもでも読めるような簡単な言葉しか使われていないのに、なんという深い内容の絵本なのでしょうか。
なんでも美智子皇后が幼い時にこの絵本を読んでもらい深く心に残っていて、皇室で辛いことがあった時にこの絵本のことを思い出して、心の支えになったそうです。
あとがきににはこう書かれています。
この作品の、殻いっぱいにつまった悲しみを背負ったかたつむりは、そのまま人間世界を逆照射していて、決して悲しみから目をそらさず、悲しみをこらえつづけるその向こうに、他人を思いやる優しさや愛が生まれることを行間に滲ませていると思うのです。
人の背負っている悲しみはかたつむりの殻のように次第に大きくなっていくかもしれないけれど、その分さらに人に優しくなれると言うこともいえるかもしれません。
そして、人によって背負っている悲しみが違うことをかたつむりたちの殻の模様の違いから学ぶこともできるのです。
何冊かの絵本になっているので、その絵本によって受ける印象も変わるので、読み比べてみるのもおススメです。