土家 由岐雄・作/武部 本一郎・絵
目次
あらすじ
上野動物園のゾウの檻の前にはいつも大勢の子どもたちが楽しく騒いでいます。
しかし、ゾウの檻の向かいにあるひっそりと建つ墓石には気がつく人はほとんどいません。
この墓石はゾウを含めて、上野動物園で亡くなった動物たちの慰霊碑なのです。
第二次世界大戦中、上野動物園にはジョン、トンキー、ワンリーという3頭のゾウがいて、子どもたちの人気者でした。
しかし、戦争が激しくなるにつれて、軍の命令で動物園の動物たちは殺されることになってしまいました。
次々に動物たちが殺されて、いよいよジョンたちの番です。
エサを与えないことにして、何日も経ちました。
まずはジョンが死に、残りはトンキーとワンリーだけになりました。
2頭ともげっそりとやせていき、飼育員さんたちは助けてあげたくてもどうしようもできません。
すると・・・・
トンキーとワンリーがふらふらと、後ろ足だけで立ち上がりました。
いつもお客さんの前でこれをやるとエサをもらえたので、やってしまったのでしょう。
その姿に飼育員たちはもう我慢できずに、水と餌を2頭の足元へぶちまけました。
そんなみんなの願いもむなしく、ついにトンキーとワンリーは力尽きて鉄の檻にもたれかかって死んでいきました。
飼育員たちが泣きながらゾウの体にすがりついているときにも、敵の飛行機が上空をゴーゴー音を立てて飛んで行くのでした。
『かわいそうなぞう』について
漫画 『ドラえもん』のエピソード「ぞうとおじさん」の原作にもなった絵本です。
戦争の犠牲になったのは人間だけではなく、動物も犠牲になったということを忘れてはいけませんね。
私も以前上野動物園を訪れた時に、ひっそりと設置されている動物慰霊碑に手を合わせました。
上野動物園で毎年9月23日の秋分の日の頃に動物慰霊祭が行われています。
そして、この絵本を読んで思ったのは「声に出せない反戦の想い」でした。
「思ったことを何でも言える現代に生れた幸せ」を改めて感じました。
そのことはこちらのブログに以前書いてみたので良かったら読んでみてくださいね。