バージニア・リー・バートン (著), かつら ゆうこ (翻訳), 石井 桃子 (翻訳)
この絵本はサンフランシスコの町を走っていたケーブルカーの"ケーブル"の目線から描いた、ケーブルカーの存続を願った町の人たちが反対運動を起こした実際の物語です。
ケーブルカーとは簡単に言うとケーブルにつながれた車両を引っ張って移動させるという仕組みの乗り物であり、日本で有名なのは滋賀県比叡山延暦寺の坂本ケーブルや箱根山の箱根登山鉄道あたりでしょうか。
車両本体に動力を積んでいないため軽く、この絵本でも描かれていますがブレーキが強力なので山岳地帯で使われることが多いんですね。
バスやタクシーでさえ雨が降ると滑ってしまう急な坂でもメーベルは余裕で登ってしまいます。
しかし、速度も遅く維持費もかかり儲けもあまり期待できないメーベルは"時代の発展"の波に飲み込まれ廃止の危機にさらされます。
「そこ どいた、どいた・・・
ふるぼけ ケーブルカーの おちびさん。
ケーブルカーは なくしてしまうって、しかいぎいんさんたちが いってたぞ。
きみたちは きゅうしきで じだいおくれ、のろのろしていて あんぜんじゃないからさ」
バスの"ビッグ・ビル"にもこんな風にバカにされたメーベルですが、サンフランシスコの人々はメーベルの価値を分かっていて、「サンフランシスコのケーブルカーを守る市民の会」という団体を作り住民投票を起こしました。
結果は住民の熱意が伝わり見事存続決定!
ビッグ・ビルもメーベルを見直して仲直りしました。
バートンの絵本には共通していえることですが、とにかく乗り物についてとても分かりやすく詳しく解説していて乗り物好きの子どもにはたまらないでしょうね。
ここでもケーブルカーの構造や仕組み、動かし方が分かりやすく解説されています。
そして、市民の団結力が行政をも動かす民主主義のストーリーも感動で楽しめます。
後年、違う訳者で『坂の町のケーブルカーのメーベル』という絵本も発売されました。
『ちいさいケーブルカーのメーベル』は既に絶版してしまっているので、『坂の町の~』の方が手に入れやすいかもしれないですね。