デビッド マッキー・作/なかがわ ちひろ・絵
あらすじ
昔、大きな国がありました。
この国には強い兵隊や大砲がたくさんあったので、国民はこの国の暮らしほど素敵なものはないと信じ切っています。
そして、大きな国の大統領は色んな国へ戦争をしに行きました。
なぜなら、大きな国が世界中を征服すれば、世界中の人々が幸せになると思っていたからです。
たくさんの国が大きな国に征服されて、残るは小さな国ひとつだけになりました。
大きな国の大統領が小さな国を征服しようと、兵隊を送りこみました。
しかし、なんと小さな国には兵隊がいなかったのです!
しかも小さな国の人々は、戦争をしかけてきた大きな国の兵隊を大切なお客のように歓迎するではありませんか。
最初は戸惑っていた大きな国の兵隊たちもこの小さな国の人々と一緒に過ごすうちに、生活や遊びを楽しむようになってきました。
兵隊たちは大きな国に帰ってきても、小さな国の遊びや文化、料理を他の人に教えて広めていました。
今では大きな国が小さな国になったようです。
でも、大統領は満足です。
「どれも、これも、戦争でぶんどってきたものだからな」
そしてその夜、大統領が息子に歌ってあげたのはあの小さな国の歌でした。
世界中の人々を幸せにするために、世界中を征服したある国の大きな国の大統領のお話でした。
『せかいでいちばんつよいくに』について
『ぞうのエルマー』でおなじみのデビッド・マッキーの絵本です。
結局「世界一強い国」とはどこだったんでしょうか?
- 強い兵隊がいて、他の国を征服し続ける大きな国
- 兵隊がいなくても、外部の人間を受け入れて自分たちの文化様式で他国を飲み込む小さな国
何が一番幸せなのか、どうやったらみんなが幸せになれるのか
その答えは書かれていません。
もしかしたら一生答えはでることはないかもしれませんが、考えるヒントにはなるはずです。
そしてもう一つのテーマは「どうしたら戦争を失くすことができるのか」
「世界中の人々を幸せにするためには、武力で征服するしかない」
こんな大義名分を掲げて、歴史上どれだけ多くの戦争が引き起こされてきたんでしょうか。
こんな過去の過ちを分かりやすく教えてくれています。
武力を持った大きな国の大統領は小さな国を征服したつもりでしたが、実は小さな国に飲み込まれてしまったことに気がついていませんでした。
大きな国の武力に勝ったのは小さな国の「人間の心」でした。
- 例え、侵略者であっても武力で対抗するのではなく、心を込めて受け入れる。
- 兵隊たちには戦いよりももっと楽しいことを教えてあげる。
それを誰にも気づかれないようにさりげなく。
武力がなければ世界中が平和になるというのはお花畑の絵空事と思われるかもしれませんが、少しでも子どもたちの未来が変わるきっかけになる絵本であると思います。
領地拡大や自国の利益を増やすために、他の国を征服して多くの命を奪っている国の指導者には読ませたい絵本ですね。