教科書でおなじみの宮沢賢治「やまなし」の絵本です。
文章だけでなく、詳細で鮮やかな絵とともに読むとイメージがしやすくまた違った印象になります。
「やまなし」は他の分かりやすい一般的な教科書物語とは違い、何を言おうとしどう理解すればいいのかがとても分かりにくく、教師泣かせの作品として有名ですね。
「やまなし」は川底の様子を映した二枚の幻燈という設定で<五月>と<十二月>二部作に分かれています。
<5月>では二匹の蟹の兄弟が「クラムボンがかぷかぷ笑った」「殺された」「また笑った」という会話をしています。
そこへ、魚を捕食しに川に飛び込んできたかわせみの恐怖に怯える様子が描かれています。
<十二月>では夏とはすっかり変わった川底で蟹の兄弟が吐きだした泡の大きさを比べています。
明日は"イサド"へ行く日の夜、やまなしが川に落ちてきました。
川底は月明りに照らされたやまなしの黄金の光と甘い匂いでいっぱいになりました。
宮沢賢治は独特な感性の持ち主で「造語」の名人でもあります。
クラムボン、イサド、かぷかぷ など・・
この絵本では用語解説集をつけてくれていますが、宮沢賢治自身がその用語の正体を明かさず、読者の想像力にゆだねた以上、読者それぞれが想像力を働かせて考えてみたらいいのではないでしょうか。