神田松之丞・監修/石崎洋司・文/飯野知好・絵
あらすじ
神戸市の舞子の浜に宮本武蔵という日本一の剣豪が立ち寄りました。
茶店でお茶を飲んで立ち上がろうとすると、ちょうど入ってきた虚無僧に荷物が当たってしまいました。
怒る虚無僧に謝る武蔵、一向に虚無僧の怒りはおさまりません。
「いざ 決闘いたせ!」
みるみるうちに黒山のような人だかりです。
虚無僧相手には真剣を使わない武蔵は二刀流の木刀を振りかざして<天地陰陽活殺>の構えです。
一方虚無僧は左手に鎌が飛び出た尺八を構え、右手はなにやら重りのついた鎖のようなものをぶんぶん振り回しています。
武蔵ははっと気づきました。「これこそが、鎖鎌の名人の山田真龍軒・・・」
真龍軒の振り回した鎖が武蔵の剣にからまり、後ろは崖。
絶対絶命の武蔵に真龍軒が鎌で剣を払い落とした瞬間に武蔵の姿が突然消えました!!
なぜ武蔵の姿が突然消えてなくなったのか?
実は武蔵はある術を使ったのです!
『講談えほん 宮本武蔵 山田真龍軒』について
講談師 神田松之丞の語り口調そのままの絵本です。
- 「ぴしーーーーーーーー!」
- 「ガラガラガラ」
- 「ぶんぶんぶんぶん」
- 「すっ、すっ、すっ、すーーーーー」
など独特の形容詞と迫力のある絵もリアルな臨場感を与えてくれます。
講談とは「歴史上の出来事や人物などを題材にした話芸」です。
小さな机を扇で叩きながらテンポ良く読んでいき、実在の人物の実際にあったことをベースにしているのも特徴です。
「宮本武蔵」の物語にはいろいろなバリエーションがあり、有名なのは吉川英治『宮本武蔵』でしょう。
神田松之丞さんは『寛永宮本武蔵伝』というお話を題材にしています。
『寛永宮本武蔵伝』では「山田真龍軒」は全17席中、15席目になります。
真龍軒は実在したともいわれていますが、真偽は不明のようです。
最近私は『宮本武蔵語録』という五輪書からの武蔵の名言を集めた本を読んでいて、そこにこの絵本と出会い思わず手にとってしまいました。
「負ければ死ぬ」という厳しい世界でストイックに体と精神を鍛えてきた武蔵の言葉は今を生きる我々にも響くものがありますね。