『やまたのおろち』羽仁進

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羽仁進・文/赤羽末吉・絵

目次

あらすじ

スサノオは乱暴者だったので高天原から追放されてしまいました。

当てもなく歩いていると大きな川にたどりつき、川上から流れてくる箸を見つけました。

 

「箸があるということは、人がいるということだ」とスサノオが川上に向かって歩いていると小さな家があり、おじいさんとおばあさんとクシナダヒメという少女が泣いていました。

 

 

聞けば"ヤマタノオロチ"という8本の首と8本のしっぽをもつ蛇の化け物が、クシナダヒメを食べに来るというのです。

 

 

スサノオはヤマタノオロチを退治すべく、特別に強い酒を8つのかめに入れ木の台の上に置いておきました。

 

そしてクシナダヒメを櫛に変えて髪の中に入れて、ヤマタノオロチが来るのを待ちました。

 

 

夜になって稲妻が光りだすと、ヤマタノオロチが現れました。

お酒のにおいに気がついたヤマタノオロチの8つの頭はそれぞれのかめに突っ込み、酒を飲み始めました。

酔っぱらったヤマタノオロチの首をスサノオは切り落としていきますが、残った首たちに反撃されて傷を負ってしまいます。

 

クシナダヒメの助けもあり、全ての首を切り落としヤマタノオロチを退治したスサノオはクシナダヒメと結婚しました。

スサノオは田んぼを作り、八人の子どもたちに恵まれて豊かな生活を送りました。

『やまたのおろち』について

古事記の一節である「スサノオのヤマタノオロチ退治」の絵本です。

古事記ではヤマタノオロチは次のように描かれています。

  • 目は赤いほおずきのよう
  • 一つの体に八つの頭と八つの尾をもっている
  • 体はコケと杉、檜に覆われていて、体の大きさは八つの谷と丘くらいの大きさ。
  • その腹にはいつも血がしたたっている

 

この正体は何なのか色んな説があります。

  • ヤマタノオロチは山の象徴であり、ヤマタノオロチの災害は川の氾濫や土砂崩れなどの山全般の災害である
  • その土地を奪いに来る抗争者
  • 農業生産の捧げものとしての人身御供を食う存在
  • 雨や風などの天候をあやつる竜神の化身である

 

などこのような風習や伝説、出来事などが合わさってできたものでしょうね。

 

 

そして、スサノオはこの土地でクシナダヒメと結婚して、2人で開墾をして作物を育てていきました。

 

なので、2人は今では五穀豊穣、縁結びの神さまとして崇められています。

 

 

 

そして、ヤマタノオロチ自身も雨風などの天候を操る竜の化身として、農耕信仰と深い関わりがあります。

 

農耕の対象であるクシナダヒメが自然の対象であるヤマタノオロチに食べられなかったのは、農業を行う人たちが自然災害には負けないということを意味しているのかもしれませんね。

 

ちなみに、この夫婦の子孫の1人が出雲大社に祀られている「因幡の白兎」で有名なオオクニヌシノカミです。

日本の国を作った神であり、たくさんの妻をめとったことから、国づくりの神さまや縁結びの神さまとして大勢の人に崇められています。

 

そしてもう一つ、スサノオがヤマタノオロチのしっぽを切り落とすと中から剣が出てきました。

これが名古屋の熱田神宮に祀られている三種の神器の一つの「草薙の剣」です。

 

後に、日本武尊がこの剣でピンチを脱することでも有名ですね!

 

私は古事記や神社巡りが好きなので、このようなお話が大好きです。

『やまたのおろち』の絵本