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第Ⅱ章 人間には根っこがない
王子さまは地球に着いてから「ぼく」と出会うまで一人ぼっちでずっと孤独でした。
なんとか友だちを作るきっかけを作ろうと、人間の話を聞きにあちこち歩きまわるうちに人間についてますます疑問を持つようになってしまいます。
王子さまに「人間」について教えてくれたのは次の3人です。
- 砂漠の花
- スイッチマン(列車の転轍手)
- 丸薬の商人
「砂漠の花」
王子さまが人間がどこにいるか花に尋ねました。
人間は植物と違って根っこがないから居場所を求めてフラフラさまようしかないのだそうです。
昔と違って同じ場所に一生住み続けることが少なくなった現代人は、植物から見ればかわいそうな存在であるらしいのです。
「スイッチマン(転轍手)」
スイッチマン(転轍手)とは路線を切り替えて列車の通り道を変える仕事をしている人のことです。
今は機械で切り替えていますが、昔は人が行っていました。
王子さまがスイッチマンに何をしているか尋ねると「旅行者を1000人ずつまとめて仕分けしている」と答えます。
次々と走り去っていく機関車を横目で見ながら「あんなに急いで何を探しているんだろう?」と不思議がる王子さまに「機関車の運転手だって知らないよ」と答えるスイッチマン。
つまり人間は何の目的で忙しく駆けずり回っているのかもはや分からなくなっているのです。
王子さまは機関車を見ながら再び尋ねました。
どこに行っても満足できない人間とは一体なんなのでしょう。
全ての場所が居心地が悪いということは結局「根っこ」がないということにつながっていくのではないでしょうか。
「丸薬の商人」
王子さまが出会ったのは「一粒飲むと一週間喉が渇かない」不思議な丸薬を売っている商人でした。
何でも人間が一週間に水を飲む時間は53分であるから、水を飲まなくてもよい分その時間が節約できるのだそうです。
しかしその節約した時間の使い道を尋ねられると特に何かをしたいということもありません。
これは先の星を所有するだけが目的となった「ビジネスマン」と通ずるところがありますね。
最近は「時短」ブームでやたら節約しようとあくせくしているが、結局空いた時間は大したことをしていないのではないでしょうか。
それだったら躍起になって時短をしないほうが、より時間を有効的に使えると思うのですが・・・
結局これも根っこがないから、したいことが定まらないのです。
ラッセルの「幸福論」によると幸福になるには次の2点が重要だそうです。
- 「人生の大目的」と「宇宙との一体感」
- 「心の中を分裂させない」
「人生の大目的」と「宇宙との一体感」
「人生の大目的」とは死んでも悔いなしと思えるようなことを見つけて、納得いくまでやること
あれやこれやと手を広げるよりも一つのことに集中したほうがより完成度の高い人生を送ることができます。
「宇宙との一体感」とは外に出たり空を見上げたりすることで自然を感じて外の世界に目を向けるということである。
人間がどんな失敗をしても宇宙や自然に全く影響を及ぼすものではありません。
そう考えると悩みが小さいものに感じて人生も楽になるのではないでしょうか
「心の中を分裂させない」
「分裂する心」を4つに分けることができます。
<心の奥の願望>本来の自分
<日々の行動>現在の自分
<毎日の願い>
<人生の大目的>将来の自分
これらが全て一致した時が心に分裂がない状態だということになります。
しかし、大人になるとやりたいことも色々な事情でやれなかったりしてそれがストレスになったりしてしまいます。
王子さまはそんな大人たちを不思議そうな目で見ているのですね。